塗り床材で「脱溶剤・水性化」を目指す

(日経アーキテクチュア2024年9月12日発行号掲載内容)

塗り床材で「脱溶剤・水性化」を目指す

塗り床材で「脱溶剤・水性化」を目指す
リーディングカンパニーとしての使命

開発・製造・販売の連携が、目標達成を後押し

塗り床材で「脱溶剤・水性化」の流れが加速している。背景には、建設現場の労働環境に安全がより求められるようになってきたうえ、施工者、施設管理者ともに化学物質に対するリスク管理強化を理由に溶剤系塗り床材を選定・使用しにくくなってきた、という事情がある。この4月に販売を開始した水性タイプの下塗り材「ベースコートAQ」は、その象徴だ。

請地 厚信 氏

エービーシー建材研究所
技術開発・試験室
部長 SE/
一級施工管理技士

請地 厚信 氏

塗り床材における「脱溶剤・水性化」の流れは、エービーシー商会がけん引してきた。プライマーでは、無溶剤型のエポキシプライマーに加え、ウレタン系やエポキシ系の水性プライマーを開発。仕上げ材では、無機系塗り床材「ラガーハード」や合成樹脂系塗り床材「ルメアコート」の商品群に脱溶剤の製品を組み込んできた。

いま、その流れが加速する背景には、塗り床材を扱う施工者と管理者の立場において、それぞれを取り巻く環境が、大きく変わってきたことがあげられる。

化学物質の規制強化へ
リスク管理の観点でも厳格に

まず施工者側については、労働安全衛生法施行令の改正で新たな化学物質規制が2023年4月と2024年4月に段階的に始まった。例えば2024年4月には、管理体制の徹底を図る狙いから、化学物質管理者や保護具着用管理責任者の選任が義務化された。背景には、化学物質を原因とする労働災害が後を絶たないという実情がある。

管理者側については、リスク管理を強化する中、有機溶剤を用いた塗り床材は使いにくさが増していた。床の再塗装というメンテナンス作業を自社で行う施設も増えてきただけに、より安全な塗り床材を選定する必要性が高まってきたのである。

2024年問題への対応から工程の短縮が求められる

「脱溶剤・水性化」の課題は、耐久性や短工期の実現にある。

耐久性は塗り床材として欠かせない。特に製造工場の床は油脂や薬剤の接触と衝撃や摩擦を受けるため、コンクリートの保護膜としての強さが求められる。エービーシー建材研究所で技術開発・試験室部長を務める請地厚信氏は、「下地コンクリートのひび割れに追随できるだけの性能が欲しい。それだけの耐久性を水性の塗り床材で実現するのは、容易ではありません」と強調する。

「脱溶剤・水性化」にとってさらに手ごわいのは、短工期の実現である。水は有機溶剤に比べ揮発が遅いからだ。乾燥時間が長くなれば、工期は自ずとのびる。

短工期への要請は、いわゆる2024年問題を背景にこれまで以上に根強い。働き方改革を考えると、硬化が遅くなる冬場でも、その日のうちに次の工程に移れるだけの時間短縮を実現したい。

グループ4社で課題に向き合い
試作を重ね、試験施工を繰り返す

このような社会的課題に早々に向き合い製品化を実現したのが、「ベースコートAQ」という下塗り材である。高耐久型の樹脂系塗り床材に使用する水性型下塗材だ。

プライマーと下塗りの2つの役割を果たすため、溶剤系のプライマーを用いる場合と比べると、工程を一部省くことが可能。仕上げ材を塗る前の工程を短縮することで短工期を実現する(図1、2)。

図1
図2

開発にあたったのは、エービーシー商会グループの4社。販売を行うエービーシー商会、樹脂製品の製造を行うエービーシー化工、骨材製品の製造を行う東京化学、そして、商品開発を行うエービーシー建材研究所だ。

「この4社で試作を重ねながら開発を進めました。実現場を想定し、製品としての性能や製造コスト、開発期間の制約がある中で製品化を果たすには、机上の検討だけでなく、工場での試作が欠かせません」。開発の苦労を請地氏は明かす。

その試作品を基に試験施工を繰り返す日々。「試作品を基に幾度となく検討を加え、その結果を次の試作品にスムーズに反映させられる。そうしたエービーシー商会、工場、エービーシー建材研究所の"開発・製造・販売"の体制が、新しい製品のスピーディーな開発につながっています」(請地氏)。

多量の溶剤を含有しているプライマーを、まずは排除したいという考えから、開発がスタートした「ベースコートAQ」は、溶剤系のプライマーに代わる製品となった。水性樹脂と特殊粉体を混合し、従来の溶剤系と変わらない耐久性を実現している(図3)。

図3
「ベースコートAQ」は、基材、硬化剤、骨材で構成される。それらを混ぜた後、コンクリート床に金ゴテで塗り付ける。
水性のため、樹脂製のタンクで保管可能
塗装に使用した用具は水で洗浄可能

先を見据えた技術開発
塗り床材のパイオニアが目指すもの

請地氏は「今後は『ベースコートAQ』の技術を応用し、より厳格化していく化学物質規制を念頭に、塗り床材を水など安全性の高い物質から製造していく技術を構築する必要があります。そうした技術開発が、リーディングカンパニーとしての使命です」と、明快に答えた。

目指すのは、建設現場の労働環境をより安全・安心なものにしていくこと。立ちはだかる課題の解決へ、エービーシー商会グループは塗り床材のパイオニアとして、率先して動く。

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