エキスパンションジョイントカバーの耐火帯

エキスパンションジョイントカバーの「耐火帯」って何?

耐火建築物に設置されるエキスパンションジョイントカバー(Exp.J.C.)は、多くの場合、「耐火仕様」にすることが求められます。
なぜかというと、耐火性能を持つ躯体同士の隙間(クリアランス)にExp.J.C.を取り付けるため、その部分が建物全体の耐火区画の"欠損部"になってしまうからです。

その隙間にも、防耐火上、一定の性能を持たせるために取り付けるのがExp.J.C.用の「耐火帯」です。
エービーシー商会では、Exp.J.C.に一定の耐火性能を確保できる耐火帯を製品化しています。

床のエキスパンションジョイントカバー(Exp.J.C.)を、耐火帯を用いて耐火仕様とする例
床のエキスパンションジョイントカバー(Exp.J.C.)を、耐火帯を用いて耐火仕様とする例

耐火仕様の必須は「1時間遮炎性能」

Exp.J.部を窓や配管設備部のような「開口部」と捉えた場合、エービーシー商会が取りそろえる耐火仕様のExp.J.C.は、建築基準法施行令第百七条二号・三号が規定する耐火性能に対応しています。この性能は、「主要構造部」に求められる耐火性能とは異なるものです。

耐火建築物の場合、建物の「主要構造部」(壁、柱、床、はり、屋根、階段)には、「耐火性能区分」(1時間・2時間・3時間耐火構造)に基づく耐火性能の確保が求められます。
それに対して、「開口部」に設置されるExp.J.C.の耐火仕様は、「1時間遮炎性能」(施行令第百七条三号)で対応します。

この違いは、耐火規定の対象となる部材が「主要構造部」なのか、「非主要構造部」なのかによって確保すべき性能が分かれるためです。
Exp.J.C.は非主要構造部材であり、建築基準法でも部材として明確に規定されていません。そのため、主要構造部を対象とする耐火性能区分は、Exp.J.C.には適用されないと考えています。

Exp.J.部のとらえ方は開口部と同等

次に、1時間遮炎性能を定めた同施行令第百七条三号を見てみます。

第百七条 耐火性能に関する技術的基準

三 外壁及び屋根にあつては、これらに屋内において発生する通常の火災による火熱が1時間(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分及び屋根にあつては、30分間)加えられた場合に、屋外に火炎を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないものであること。

この条文は、火災が発生した建物からの延焼を防ぐために、開口部などに1時間の遮炎性能を求めるものです。
躯体同士の隙間に取り付けるExp.J.C.も、開口部と同様、1時間の遮炎性能を確保すべきだと考えます。

●非主要構造部であるExp.J.C.は「1時間遮炎性能」

エービーシー商会の耐火仕様のExp.J.C.は、「1時間遮炎性能」を確保しています。
また、より高い要求性能に対応する「1時間遮熱・遮炎性能」を備える耐火帯も用意しています。

耐火帯の性能を担保する「適合証」って何?

適合証
エービーシー商会が取得している日本エキスパンションジョイント工業会の適合証

「適合証」は、日本エキスパンションジョイント(EJ)工業会が証明・発行しているもので、現状においては、第三者が性能を評価する唯一のものです。エービーシー商会のExp.J.C.用耐火帯は、同工業会が定める試験に合格したデータに基づき、性能確保を証明しています。

●エービーシー商会の取得した性能別適合品番号
遮炎性能:EAJ-防災-3013
遮炎性能および遮熱性能:EAJ-防災-3014

耐火帯も安全な素材に切り替え

Exp.J.C.用の耐火帯は、繊維素材を薄いマット状にした基材を、ガラスクロスで被覆したものです。
従来、耐火帯の基材には、「リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)」と呼ばれる繊維素材が使われてきましたが、2015年11月に改正された労働安全衛生法、および特定化学物質障害予防規則(特化則)により、新たに規制対象に加わりました。
これを受けて、エービーシー商会のExp.J.C.用耐火帯は、特化則の規制対象外で、人体などに対してより安全な耐熱繊維「アルカリアースシリケートウール(AES)」に切り替えています。

耐火帯が必要かどうか、どう判断すればいい?

耐火建築物では、多くの部位で、耐火帯を用いる耐火仕様のExp.J.C.が必要になると考えられます。
もっとも、Exp.J.C.を耐火仕様とするかどうかについて、Exp.J.C.メーカーはその判断材料を提供することはできますが耐火帯の要不要を判断する立場にはありません。
具体的なことについては、設計者としての解釈のほか、特定行政庁あるいは建築主事との協議、それらの判断を仰ぎながら決めることになります。

1.Exp.J.C.部に求められる耐火性能

建築基準法施行令第百七条により、耐火建築物の主要構造部には部位ごとに非損傷性(令第百七条一号)、遮熱性(令第百七条二号)、遮炎性(令第百七条三号)が求められていますがエキスパンションジョイント部は空間ですので非損傷性は不要です。主要構造部そのものとは異なり構造耐力に影響がないことから建築基準法施行令第百七条二号(1時間遮熱性能)と三号(1時間遮炎性能)を満たしていればよいことになります。

2.2種類の耐火仕様

エービーシー商会のExp.J.C.用耐火帯は、上記の遮炎性の性能を持つ仕様である「12.5mm耐火帯」と、遮熱性の性能にも対応した仕様である「25.0mm耐火帯」の」2種類について、日本エキスパンションジョイント工業会の適合番号を取得しています。

※日本エキスパンションジョイント工業会およびエービーシー商会ではエキスパンションジョイント部を「開口部」と認識しておりますが、「主要構造部」と捉える場合もあり適合法令がそれぞれ異なります。「開口部」と捉える場合は、防火性能:令第百九条の二「20分遮炎性能」、令第百三十六条の二 三号イおよび、令第百十二条「20分~1時間遮炎性能」の検証を要し、「主要構造部」と捉える場合は、要求耐火性能:令第百七条二号「1時間遮熱性能」、令第百七条三号「1時間遮炎性能」の検証を要します。

  • ・クリアランス900mm:遮炎性能(12.5mm耐火帯)
  • ・クリアランス900mm:遮炎性能・遮熱性能(25.0mm耐火帯)

どちらの場合においても検証を経て要求性能を満たしております。
詳しくは日本エキスパンションジョイント工業会のホームページも併せてご確認ください。
http://www.apajapan.org/EJ/ej-home.htm

なぜ、耐火帯には「大臣認定」や「評定証」がないの?

極めて特殊性の高い部材であるExp.J.C.用の耐火帯は、国土交通大臣認定や、日本建築センター(BCJ)による評定の対象になっていません。現在、その性能を第三者的に認定するのは、日本エキスパンションジョイント(EJ)工業会の「適合証」のみです。
ここには、次のような歴史的な背景があります。

●日本建築センターの「評定証」を取得していた時代(~2000年)
2000年の改正建築基準法施行により、旧38条認定(※)が廃止されるまで、Exp.J.C.用の耐火帯は、BCJの防災性能評定を受けて「評定証」を取得していました。
Exp.J.C.用の耐火帯は、建築基準法に規定されない建材のため、国土交通大臣認定ではなく、BCJ評定という形をとっていました。

※38条認定
建築基準法で規定していない材料や構工法などを用いようとする場合、第三者機関による試験によって安全性などを立証することを条件に、特別に使用を認める国土交通大臣認定制度。従来の「仕様規定」から「性能規定」への転換を図った2000年の建築基準法改正で廃止されたが、2015年に施行された改正建築基準法で復活した。

●評定廃止で「適合証」に移行(2002~2015年)
旧38条特認の廃止に伴い、2002年5月に国土交通大臣認定やBCJ評定が廃止されました。これによって、Exp.J.C.用耐火帯の性能を確認する第三者機関がなくなりました。
そこで、BCJ評定による試験データをそのまま用いて、EJ工業会が新たに設置・移行したのが「適合証」です。
その後、2009年11月、EJ工業会による試験方法の改訂によって「新適合証」に移行しました。

●38条特認復活後も「適合証」を継続(2015年~)
2015年の改正建築基準法施行で、旧38条認定が復活しました。これを機に、BCJ評定の復活も検討されましたが、結果として、Exp.J.C.用の耐火帯は対象外と判断されました。
そう判断された背景には、Exp.J.C.用の耐火帯は特殊性の高い部材であることに加え、すでにEJ工業会において性能設定や試験方法、認定の基準などが確立され、長年にわたり適切に運用されていた実績があります。

2017年1月には、耐火帯に用いる材料を、より安全な材料に切り替えたことに伴い、新規の適合番号に移行し、現在に至っています。
エービーシー商会のExp.J.C.用耐火帯も、こうした歴史と歩みを一にして発展してきました。

●耐火性能認定の経緯

耐火性能認定の経緯

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