笠木は『躯体を守る』だけではありません
ご存知だと思いますが、笠木についての逸話から入らせていただきます。
もくじ
笠木(かさぎ)とは
もともとの意味は、「鳥居・門・板塀などの上縁に、横に渡す木。冠木(かぶき)。」でした。 (三省堂提供「大辞林 第二版」より抜粋)
建築業界では、防水工事を施工するパラペット(屋上などに設けられる手摺壁)等の頂部に施工する仕上材の事、金属製または人造研ぎ出し石、セメント製などの材料の事を『笠木』と言ってきました。『躯体を腐食から守る』 という点からそのまま用いられたのでしょう。
今回は、この金属笠木について触れたいと思います。
四半世紀前は板金工が作る現場仕上金物だった
金属笠木といえば、板金工が工場で曲げ加工した部材を現場に合わせて制作するものでした。
日本におけるアルミ製システム防水端部材の起源は、1973年に、エービーシー商会がドイツのシントロパル社(のちにアルウィトラ社)と技術提携し、アルミ製システム防水端部材「アルウィトラ」の商品名で販売をはじめたのが最初です。
<< 密閉式から、オープンジョイント式へと進化させた
アルミ製システム防水端部材「アルウィトラ」 >>
元々の金属笠木は「板金笠木」と呼ばれ、パラペットの上に密閉式の台形の箱を被せるものでした。
継ぎ目の目地処理や壁との隙間をコーキングに頼る為、経年劣化とともに笠木本体の機能が低下する危険性がありました。
密閉式のデメリット(板金笠木)
- ・シーリング材が劣化しやすく、亀裂によって毛細管現象を誘発し、笠木内部に雨水が溜まる危険性がある。
- ・空気の対流不足により、結露しやすい為、アルミニウムが裏面から腐食する危険性がある。
- ・笠木の水切り機能がなく、外壁を雨水で汚す。
- ・製品精度や施工精度が均一でない。
- ・下地材(スチール)と笠木(アルミ)との接触により、電蝕作用が生じて、笠木が腐食を起こす。
オープン式のメリット(アルウィトラ)
従来の密閉式(コーキング式)の問題を解決したのが、オープン式笠木「アルウィトラ」だったのです。
- ・独自のジョイント部処理により、アルミ素材の熱膨張に対応。
- ・笠木裏面とパラペットの間に空気の対流があるので、結露の発生が少なく、腐食や劣化を防止します。
- ・突起形状の水切り機能により、外壁を雨水の汚れから守ります。
- ・下地材もアルミを使用。笠木の腐食を防止します。
- ・既製品の為、均一な製品精度と施工精度が維持できます。
- ・笠木本体が躯体と絶縁されている為、躯体の伸縮などに影響されません。
<< 日本の建築ニーズに対応し、笠木「アルウィトラ」は進化を続けてきました。>>
1973年に導入した「アルウィトラ」は、1977年(昭和52年)に筑波の16棟におよぶ大学、研究所に採用されたのがきっかけとなり多くの建築関係者に認知され、全国へ普及していきました。
アルミ笠木市場統計資料(日本金属笠木工業会)によると、金属笠木工業会の会員規格品市場は平成14年度の実績で2,211千mに上るそうです。
日本にアルミシステム防水端部材を導入して30年。「アルウィトラ」は設計、施工現場のニーズを反映しながら、ABC独自の改良・開発によって、金属笠木に求められる「機能性」と、日本の建築構造物の「意匠性」の2つを軸に、展開してまいりました。この「機能性」「意匠性」の商品ラインアップを簡単に紹介させていただきます。
機能性笠木シリーズ
日本の気候、建築物へのマッチング、改修など、求められる性能を製品化した、高機能笠木です。
デザイン笠木シリーズ
現代建築の大きな要素「美観」をさらに進め、「端部をデザインする」というコンセプトから生まれた笠木です。
他社にないこだわりは、設計者とともに作り上げてきたABC独自のテクノロジーです。
今後の笠木ラインアップにご期待ください。
単に『躯体を守るだけ』ではなく、「機能性」「意匠性」を軸として、様々なご要望にお応えして、幅の広いラインアップを揃えてきました。
今後も、ABC独自の商品づくりに取り組む為、設計者のニーズに応えていきます。
カタログやHPに掲載されていないものでも、こんな笠木はできないかといった事でも弊社担当員にご相談ください。