地震のときエキスパンションジョイント(Exp.J.)は
どう動く?
建物は3次元に変位する
Exp.J.が必要な建物を設計するには、地震発生時の建物の動きをしっかりと理解することが不可欠です。
Exp.J.は、構造上、必要となる建物同士の隙間「クリアランス」に取り付けます。地震が発生すると、地盤は3次元的に動くので、建物も3次元的に揺れます。このとき、クリアランスを挟んだ建物同士は、それぞれ異なる3次元的な揺れ方をします。
そのため、クリアランスに設置したExp.J.にはX・Y・Zの3方向に変位が生じます。
X・Yの2方向の変位は、クリアランスに対して水平方向に生じるものです。X方向は、クリアランスに対して垂直に広がったり、縮んだりする動き、一方のY方向は、クリアランスに対して平行にスライドする動きです。
- 水平方向の変位(X方向)
-
クリアランスに対して垂直に拡大・収縮する動き
- 水平方向の変位(Y方向)
-
クリアランスに対して平行にスライドする動き
- 鉛直方向の変位(Z方向)
-
地盤に対して鉛直方向の動き
Z方向を考慮しない設計が主流
Exp.J.を取り入れる設計で、一般に考慮されているのは、X方向とY方向の2つの変位です。現状では、Z方向については考慮しないのが通例となっています。
なぜなら、3方向の変位を比べると、相対的にX・Y方向よりもZ方向は非常に小さいためです。本来はZ方向も考慮した設計が望ましいのですが、現状では、一部の特殊な建物でしか考慮されていません。
クリアランスをどこに設定する?
早い段階からシンプルな納まりを意識
では、構造上、必要なクリアランスは、建物のどこに設定すればよいのでしょうか?
その位置は、プランニングや構造計画と密接に関係します。通常は、基本設計の段階で、おおよそクリアランスの位置が決定されます。
クリアランスの位置を決める際には、できるだけExp.J.の納まりがシンプルになる箇所を選ぶことが基本です。
納まりが複雑になる位置にExp.J.を設置してしまうと、施工が難しくなったり、コストアップにつながったりしかねません。例えば、建物に対して渡り廊下が斜めに取り付く場合のように、直角ではない角度が生じる箇所にExp.J.を設置すると、納まりが複雑になりがちになりExp.J.の製品本来の性能を発揮しにくくなります。

Exp.J.の納まりが複雑になる一例
一般的な製品として、メーカーが用意しているExp.J.の規格品は、直線を前提とした「平タイプ」と直角を前提とした「コーナータイプ」が中心です。それらで対応できない納まりになると、特注品(セミオーダー品)が必要となります。その場合、コストに大きく影響したり、動きの検証があらためて必要になったりすることがあります。
天井「平タイプ」と「コーナータイプ」

床「平タイプ」と「コーナータイプ」

取り合いが多いと複雑に
床・壁・天井の各方向のExp.J.の取り合いが多くなる場合も、納まりは複雑になりがちです。例えば、柱型に沿ってExp.J.を回したり、バルコニーの腰壁を巻くようにExp.J.を設置したりするなど、細かく角部が発生すると、Exp.J.の取り合いが難しくなります。
クリアランスの設定では、X方向・Y方向の双方に動くことをイメージして、できるだけ取り合いが少なく、Exp.J.がシンプルな納まりになるような位置を選ぶのが基本です。



出展:日本エキスパンションジョイント工業会「建築用エキスパンションジョイントの手引 2016年度版」
雨漏りにも注意
漏水に対する配慮が必要なケースもあります。例えば、上階が開放廊下などの外部空間、下階がエントランスや廊下などの内部空間になる場合です。こうした箇所は、できるだけExp.J.を設けないことが基本ですが、避けられない場合は、Exp.J. の下に「受け樋」を入れるなどの雨仕舞が不可欠です。
また、屋外となる上階スラブの水勾配を、Exp.J.に向けて取ってしまうと、水を集めることになり、漏水のリスクが増します。
そのほか、意匠性や施工性の面からも、クリアランスの設定では留意すべき点が少なくありません。

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