塗料は、顔料、樹脂、添加剤という構成

塗料に共通する3つの大きな役割

木材への塗装は、素肌への化粧によく似ています。木材も素肌も、手入れを怠ると劣化の恐れがあります。それを、塗装や化粧という手段で防ぐわけです。
そこで期待される役割は、大きく3つあります。
第一は、美観の向上です。例えば着色するなどして見た目を良くするという役割です。見た目が良くなれば、建物の魅力はそれだけ増します。
第二は、素材の保護です。Part1でご紹介したように、「水」「空気」「太陽」といった劣化の要因は身近な環境に存在しています。それらから、素材を守ります。
第三は、機能性の付加です。機能性の一つには例えば、汚れをつきにくくするというものが挙げられます。それによって手入れの手間を軽くできます。
では、木材保護塗料はなぜ、これらの役割を果たすことができるのでしょうか。ここで、塗料を構成する成分に目を向けておきましょう。

油性と水性、2つに分かれる塗料

●塗料には、顔料、樹脂、添加剤が含まれている

塗料には、顔料、樹脂、添加剤が含まれている

木材保護塗料を構成する成分は、顔料、樹脂、添加剤の大きく3つに分かれます。
顔料は、着色成分です。塗料を木材に塗ると、その表層に色を付けます。
樹脂は、塗膜をつくる成分です。この塗膜が、木材の表層を守ります。
添加剤は、防虫・防腐・防カビの効力を持つ薬剤などです。塗装に期待される役割の一つである機能性の付加も、それに応じた添加剤を加えることで可能になります。
これら3つの成分をとりまとめ、塗料として塗装できる状態にするのが、溶剤です。
塗料はこの溶剤の種類によって、油性と水性の2つに分かれます。油性とは、溶剤に有機溶剤を用いたものです。これに対して水性とは、溶剤に水を用いたものです。溶剤そのものはいずれも、塗装後に塗料の乾燥に伴い蒸発していきます。

顔料や添加剤で劣化を防ぐ木材保護塗料

油性は浸透、水性は造膜で木材保護

溶剤の違いは、塗料が木材にどう作用するのかという点に違いをもたらします。
有機溶剤を用いる油性の塗料は、油分の多い木材ともなじみが良く、その内部に浸透し、表層近くに保護層をつくります。木材にこのように作用する塗料は、浸透型と呼ばれます。
一方、溶剤に水を用いる水性の塗料の多くは、木材の表面に塗膜をつくります。油分の多い木材には、浸透しにくいためです。こうしたタイプは浸透型に対して、造膜型と呼ばれます。

顔料で紫外線を遮り、薬剤で虫や菌を防ぐ

浸透型にしても造膜型にしても、屋外木部を劣化から守る基本は、Part1でご説明したように「遮る」「防ぐ」「はじく」の3つです。
「遮る」役割を担う成分は、顔料です。木材の表層に色を付けることで、紫外線を遮り、それによる劣化から木材を守ります。

●木材保護塗料は成分によってさまざまなタイプに分かれる

木材保護塗料は成分によってさまざまなタイプに分かれる

「防ぐ」の役割を果たす成分は、樹脂や添加剤です。例として防虫・防腐・防カビの効力を持つ薬剤が挙げられます。このような薬剤が、虫や菌による劣化から木材を守ります。 最後の「はじく」の役割を果たす成分は、樹脂です。樹脂が撥水性を発揮し、木材の大敵である水を「はじく」ことによって、水に起因する劣化から木材を守ります。
図の「ガラス系」も、樹脂です。木材表面にガラス膜をつくり、それによって水を「はじく」という効果を発揮するという点で、撥水性を発揮する製品と似たタイプと言えます。
木材保護塗料にはこのほか、人体への安全性の高さを強く打ち出した「自然系」と呼ばれるカテゴリーもあります。この「自然系」は防腐・防虫効果を持つと言われる亜麻仁油など自然由来の物質を利用し、木材を劣化から守るのが特長です。

木材保護塗料は正しく選び、正しく使う

木目を生かすなら、浸透型の塗料を

木材保護塗料は、含まれる成分や木材への作用の仕方によって異なる特長を持っています。それをしっかりつかんだうえで、使用目的・環境などに応じて使い分けるのがいいでしょう。

●浸透型の木材保護塗料を塗装した例

浸透型の木材保護塗料を塗装した例
浸透型の木材保護塗料は木目を生かせる

浸透型の木材保護塗料は木目を生かせる

例えば外装に木材を使用するからにはその風合いを生かしたい、と建て主が願うことはよくあることです。木部を劣化から守るために木材保護塗料を用いることになるもののそれによって木材の風合いが損ねられるのは避けたいという願いでもあります。この場合には、浸透型の塗料を用いるのが原則です。
浸透型の塗料はその成分が木材の内部にしみ込みます。原則として2回、重ね塗りをすることになりますが、それでも顔料による着色は強まるくらい。表面は塗膜を感じることなく、さらさらしています。木目は透けて見えるため、木材の風合いは損なわれません。

●造膜型の木材保護塗料で再塗装した例

造膜型の木材保護塗料で再塗装した例
造膜型の木材保護塗料は見た目を一変させられる

造膜型の木材保護塗料は見た目を一変させられる

ただ浸透型は油性の塗料ですから、有機溶剤を用いています。使用環境によっては、その臭いをできるだけ抑えたい、と建て主が願うこともよくあることです。
その場合には、水性の塗料を用いるのが一つの手です。水性であれば、溶剤の臭いが気になることはそうありません。
水性の多くは塗膜をつくる造膜型のため、耐水性や耐久性に優れます。下地の木材がすでに傷んでいるときには、それを保護する役割も果たせます。また塗膜をつくることによって見た目を一変させることもできます。再塗装の場合には、油性より水性のほうが向いていると言えます。

色選びでは「カラレス」に注意する

木材の風合いを生かそうとすると、浸透型の木材保護塗料を選ぶだけでなく、その色には木材の地肌の色を生かせる透明色の「カラレス」を選びたくなります。この「カラレス」とは、「カラーレス(無色)」という言葉から生まれたものです。
この「カラレス」の使用には、注意が必要です。
木材保護塗料は成分に含まれる顔料で着色することによって紫外線による劣化から木材を守る。これまでそう説明してきました。紫外線を遮り、劣化を防ぐには、木材に色を付けたほうがいいということです。「カラレス」は着色にはなりません。
つまり、木材保護塗料として「カラレス」を使用すると、紫外線による劣化で木材の表層が灰白色になる現象である「銀化」が生じる恐れが高まります。
ただ「銀化」が生じたからと言って、木材保護塗料の効き目がなくなってしまったということではありません。塗料の中に添加剤や樹脂として含まれている薬剤の有効成分や撥水成分の効果は、施工箇所にもよりますが、一般的に3~5年は持続すると言われています。その期間内であれば、「カラレス」を選んだことで紫外線による「銀化」が生じても、虫や菌による劣化からは木材を守ることがまだできるはずです。

再塗装で失敗しないための3つのポイント

下地調整が再塗装の成否を分ける

●旧塗膜剥離剤を用いた下地調整の手順

旧塗膜剥離剤を用いた下地調整の手順

エービーシー商会の旧塗膜剥離剤「ウッドリムーバー」を用いた下地調整の手順。①剥離剤を塗布し、数分間乾燥②塗膜をヘラなどで取り除く③ブラシなどで水洗い。お勧めは高圧洗浄④しっかり乾燥させたら、下地調整は終了

木材保護塗料の成分は、一定の時期が来れば効力を失ってしまいます。塗料に期待される劣化防止という性能が失われてしまう前に再び塗装しなければなりません。
そのとき重要なのが、下地調整、つまり旧塗膜を剥がし、再塗装に向けて下地を整える作業です。下地の一部に旧塗膜を残したまま再塗装に入ると、下地の違いから色ムラが生じ、きれいに仕上がらない恐れがあります。また旧塗膜の残る箇所ではその上に塗り重ねた新塗膜がはがれやすく、いずれ塗膜のはがれが起きかねません。こうした理由から、再塗装時には通常、ブラシ、たわし、サンドペーパーなどを用いて、旧塗膜を取り除く下地調整の作業が欠かせません。
その作業を短時間で確実に済ませようとする場合には、旧塗膜剥離剤を利用するのがお勧めです。いったん塗布した剥離剤を削り取る段階で旧塗膜も一緒に取り除きます。

下地調整の段階では、水洗いや高圧洗浄後、しっかり乾燥させることも重要です。それが不十分の場合には、塗膜のはがれが起きやすくなってしまいます。
また木材の劣化が進むと、その成分の分解によって木材の内部にすき間が増える分、塗料をよく吸収するようになります。そのため、同じ建物の外壁を塗装するにしても、新築時に比べより多くの塗料が必要になります。この点は、注意が必要です。

旧塗膜を剥がし、しっかり乾燥させた後、余裕を持って用意した木材保護塗料で再塗装する――。この3つが、再塗装で失敗しないためのポイントです。

木材を使う場合にはよく、樹種に応じた適材適所を心掛けることが求められます。その木材を守る木材保護塗料を使う場合も、種類に応じた適材適所を心掛けることが欠かせません。木材保護の基本と保護塗料の特性を理解し、間違いのない保護塗料を選ぶことで、建築物に使われる木材をできるだけ長持ちさせたいものです。

ABC商会の木材保護塗料

ワイティープルーフW ワイティープルーフW
紫外線カットと高い撥水性で木材の劣化を防ぐ。
シリコンポリマー。全9色。
ランバージュシリーズ ランバージュシリーズ
施工場所・用途によって選べる9品目をラインアップ。