「プレミックス」で使いやすくなったテラゾー床

手間や施工時間が弱点だったテラゾー床

近代以降、大型建築や公共建築など様々な建物で盛んにテラゾー仕上げが使われました。今も残る近代建築や地下鉄駅のコンコースなどで、自然石を散りばめた表情豊かなテラゾー床を見ることができます。
一時は幅広く使われたテラゾー床も、高度経済成長期以降、新たに台頭してきたタイルや輸入石材などの各種床材に取って代わられ、やがてほとんど使われなくなりました。
施工の合理性や経済性の追求が進むなか、テラゾー床をつくるのに欠かせない「骨材調達」や「材料調合」、「仕上げ厚」、「施工時間」、「コスト」などが、他の仕上げ材に対して不利な状況になっていったのです。

弱点を克服する「プレミックス」が登場

弱点を克服する「プレミックス」が登場

そうした弱点を解消して、テラゾー床をより使いやすく、より身近にしたのが「プレミックス」の製品です。
“現代版のテラゾー床”とも言えるプレミックスのテラゾー床は、大きく2つの特長を持っています。
1つは、従来のテラゾー床のような手間がかからない点です。文字通り、最適な素材と配合で、材料(主材のセメントと骨材)を製品化しているので、従来のような骨材調達や材料調合は不要です。プレミックスされた材料を現場で混ぜ、練るだけです。専門的な技能を必要とせず、手間もかけることなく、従来のテラゾー床と同じように仕上げられる便利な製品です。
建材としては「無機系塗り床」の「研ぎ出し仕上げ」として従来と同じく左官工事で施工します。

現テラの例 人研ぎの例

"現代版テラゾー床"も、従来のテラゾーと同じように、骨材の粒度によって2つのタイプに分けられます。粒度が高い「現場テラゾー」と、粒度が低い「人造石研ぎ出し仕上げ」の2タイプです。これら2タイプは、通常、略して「現テラ(げんてら)」や「人研ぎ(じんとぎ)」と呼ばれています。

ガラス骨材を使う鮮やかなデザイン床も

プレミックスのテラゾー床は製品化されているので、特定の主材や骨材を組み合わせるバリエーションから選択して使うのが基本です。
しかし、デザインに応じて、メーカーによっては品質などに支障をきたさない範囲で独自に骨材を決める特注仕様も可能です。

ガラス骨材を使う鮮やかなデザイン床も

また、これまでの骨材は自然石でしたが、最近はガラス骨材も使えるようになっています。この場合、リサイクルガラスを用いるので、石とは違った色彩豊かなテラゾー床をつくることができます。

新築・改修で幅広く使える"品質改革"

採用の幅を広げる「薄塗り」「速硬性」

もう1つの特長は、「薄塗り」が可能で「速硬性」を持つ点です。これらの特長も、従来のテラゾーの弱点を克服したものです。
従来のテラゾー床は、通常30~50mm程度の施工厚を必要とします。それに対して、“現代版テラゾー床”は5~10mmの薄塗りができます。そのため、従来のテラゾーでは施工が困難だった床でも使える可能性が高くなります。また、新築に限らず、改修でも使いやすくなりました。

施工時間を大幅に短縮

また、速硬性があるので、商業施設内の店舗のように施工時間が限られるケースでもテラゾー床を取り入れやすくなりました。
施工のプロセス自体は、従来のテラゾーとほぼ同じですが、施工時間は大幅に短縮されます。
まず大きく短縮されるのが、塗り付けまでの時間です。プレミックスの材料を使うことで、下地処理から材料の混錬、塗り付けまでを1日程度で済ませることができます。さらに、養生時間も大幅に短くなります。

施工工程「塗り付け」の様子

施工工程「塗り付け」の様子

工法図(厚さ:約5mm)

工法図(厚さ:約5mm)

※写真・工法図は、ABC商会「ヴェレージアTR」の場合

テラゾー本来の自由度は継承

塗り床ならではの大きな一枚の床仕上げ

このように様々な弱点を克服する一方、塗り床であるテラゾー本来の意匠的な特長は“現代版テラゾー床”も引き継いでいます。
例えば、目地で遮られることのない大きな一枚の床仕上げが可能なことは、塗り床ならではの魅力です。

目地を使って自由なデザインも

もちろん、あえて目地を使うことも可能です。目地で仕切りながら異なるテラゾー仕上げを組み合わせれば、デザイン性の高いテラゾー床をつくることかできます。幾何学の模様や、曲線を使った有機的な柄など、設計の意図に応じて床を自由にデザインできるのは、テラゾーならではの大きな特長です。

大きく目地をとった床仕上げの例

大きく目地をとった床仕上げの例

目地を使い異なる仕上げを組み合わせた例

目地を使い異なる仕上げを組み合わせた例

●従来のテラゾー床の課題を解消したメリット

  • ・骨材選定・調達、材料調合が不要になり手間がかからない
  • ・品質(強度、耐久性、質感)が安定している
  • ・薄塗りが可能なので、新築だけでなく、改修にも使える
  • ・速硬性があり、養生時間を大幅に短縮できる

●従来のテラゾー床を継承するメリット

  • ・大きな一枚の床仕上げが可能
  • ・目地を取りながら異なるテラゾー仕上げを組み合わせたデザインも可能
  • ・柱まわりなどの床の曲線部も容易に納めることが可能

このように材料をプレミックスした"現代版テラゾー床"が登場してきたことで、テラゾー床の用途やデザインの幅は大きく広がってきました。

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ABC商会のテラゾー仕上げ

塗り床(無機系)

ヴェレージアTR
バインダーと骨材の組み合わせで多彩なデザインが可能な無機系速硬研ぎ出し床仕上材。
コンブリオ
自然な風合いを生かした無機系テラゾー床。改修・改装にも最適。