施工ミスか、選定ミスか

初期不良の塗り床。下地補修材の影響で剥がれが生じた例

初期不良の塗り床。下地補修材の影響で剥がれが生じた例

施工から1カ月以内で剥がれが生じるケースというのは、主に施工ミスによるものと推測されます。例えば、改修時に既存のぜい弱な塗膜を剥がさずに重ね塗りをすると、その塗膜が原因で、剥がれにつながることがあります。
最近はメーカーや販売店、施工業者の不具合防止に対する意識が高まっており、施工ミスによる初期不良は大幅に減少したといえます。一方、初期不良が表れる時期が過ぎてから1年以内に剥がれ、割れ、変色が生じたケースは、その塗り床がお客さまの使用用途に合っていないことが原因として多く、よく聞くのは次のようなケースです。

剥がれ、割れの原因

台車は積載物の重量や車輪の大きさ、材質などによって床への負担が変わる

台車は積載物の重量や車輪の大きさ、材質などによって床への負担が変わる

塗り床の材質が合成樹脂だということを踏まえて考えると、剥がれや割れの原因が見えてきます。剥がれとなる原因の一つに、熱水の使用が挙げられます。樹脂の耐熱水性は一般的に40℃程度です。60℃や70℃の熱水を頻繁に使う施設では樹脂が熱で劣化し、そこに台車などの荷重が加わることで剥がれや割れにつながります。また、その熱衝撃により小さなクラック(ひび)が生じ、そこから水が浸入し下地のコンクリートまで達すると、次第に塗り床が浮き、剥がれにつながります。
塗り床材の中には、ウレタン系の樹脂に硅砂などの無機物を配合することにより、100℃の熱湯にも対応できる材料もあります。
熱衝撃以外の割れの主な原因は、塗り床に加わる荷重や物理的な衝撃です。台車が通っただけで割れたというケースでは、積載物が加わった台車の荷重が塗り床の耐久性能以上であったことが主な原因と考えられます。台車で頻繁に搬送を行う場合は、積載物の重量や車輪の大きさ、材質などによって床への負荷が変わります。
また、硬く尖った物の落下などにより、塗り床材に物理的な衝撃が加わることで割れが発生します。
これらの問題は、事前の打ち合わせにおいて使用用途から想定される床に加わる熱衝撃、荷重、物理的な衝撃の種類などを明確にし、その使用条件に対応できる塗り床材を選定することが重要です。

変色の原因

食品工場では昨今、床の色をベージュ、緑、黄緑、赤、グレーなどに塗り分けて、工場内のゾーニングに活用するケースが多くなっています。また、清掃時の視認性向上を目的とした色の選定も増えており、塗り床材の色への関心が高まっています。そして、色への関心の高まりとともに、もともとはあまり気にされていなかった塗り床材の変色について気にされるケースが増えてきています。
変色の原因の一つとして挙げられるのが、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌洗浄剤によるものです。清掃で次亜塩素酸ナトリウムやアルコール系の薬剤を使用することがありますが、塗り床材に長期的に、または高濃度の殺菌洗浄剤が接触した場合、褐色に変色することがあります。また、アルコールが長期的に接触した場合は、樹脂が軟化することがあります。どちらも低濃度で短期的であれば問題ありません。殺菌洗浄した場合は必ず水洗いをして、殺菌洗浄剤が塗り床材の上に滞留しないようにすることが望ましいです。
また、糖度が高い食材の残さなどが床にとどまることで、ギ酸などの有機酸が発生します。有機酸が塗り床材に接触すると樹脂が浸食され変色や劣化を引き起こしますが、清掃の周期を増やすことで回避できます。変色や軟化は、1日の作業終了後に水洗いをすることで抑制が可能になります。

使用環境に合った塗り床選びを

せっかく時間と費用をかけて改修しても、1年を待たずに不良が生じたら無駄な投資となってしまいます。塗り床を長持ちさせるには、用途に合った塗り床材の選定に加え、正しい使い方を徹底することが重要です。

耐熱性を重視

剥がれの原因となる熱水を使う現場に対しては、耐熱性に主眼を置いたアプローチを検討されるとよいと思います。塗り床の樹脂にはさまざまなものがあり、耐熱水性に優れた樹脂を使った塗り床材もあるので、普段から熱水を使用する施設ではそれらを選定することができます。耐熱水性を有する塗り床には、下地のコンクリートまで熱が伝わらないように保護する役割があります。
100℃に近い高熱水に対応するためには、耐熱水性の樹脂を使用し、モルタル系の層を備えた水性硬質ウレタン系のモルタルタイプがお勧めです。このタイプは耐衝撃性も備えています。何℃の熱水をどのぐらいの頻度で使用するかによって、耐熱性の高い水性硬質ウレタン系を採用すべきか、耐熱性は低くても安価なエポキシ系でも問題ないかどうかを検討して塗り床材を選ぶとよいでしょう。

耐薬品性を重視

もともと塗り床材は薬品からコンクリートを保護するために開発されたものであり、その代表がエポキシ樹脂です。ただし、酸やアルカリ、溶剤の種類、濃度および接触期間によっては、塗膜の軟化や変色などの不具合が発生します。エポキシ樹脂では対応できない種類の薬品、また高濃度および長期の接触期間に対して耐久性の高い樹脂もあります。一般的な薬品に対しては、エポキシ系の塗り床材を選定すれば問題は生じにくいのですが、エポキシ系より耐薬品性に優れるビニルエステル系の塗り床材もあります。
ビニルエステル系は、薬品を高濃度のままためておくタンクヤードの防液堤に採用されることが多く、高濃度の酸やアルカリ、または有機溶剤にも耐性があります。

耐紫外線性を重視

変色防止には、耐紫外線性の良い樹脂を使用するという方法があります。中でもアクリルウレタンは紫外線による変色が起こりにくい樹脂で、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系の上にローラーで塗って使用します。ただし、塗膜自体は薄いため、摩耗により下地である塗り床材が露出するのを防ぐために定期的なメンテナンスが必要となります。
耐薬品に優れたビニルエステル系や、メチルメタクリレート(MMA)系の樹脂も、変色しにくい材質です。
MMA系は硬化が早く、塗り終わってから1時間ほどで歩くことができるため、時間に制約がある現場での改修に向いています。ただし、硬化時に独特の臭気が発生するので、改修時はしっかり養生することが大切です。

ユーザー、施工業者、メーカーでの情報共有が重要

材質選びとともに重要なのは、施工業者との関係です。良い業者の見極め方の一例として、「剥がれなどの不具合が起きやすい場所を事前に把握しているかどうか」が挙げられます。一番分かりやすいのは、打ち合わせの際に剥がれやすい端部の処理の提案がされたかどうかです。例えば、メーカーが工法図上で欠込目地の指定をしていなくても提案できる施工業者は信頼できるといえるでしょう。

欠込目地

床に入っている溝が欠込目地。
コンクリートと塗り床材の接着を強める

欠込目地の構造

欠込目地の構造
①欠込目地(10×10mm) ②上塗り

※欠込目地は5m以下の間隔で必要。

施工業者との打ち合わせでは、ユーザー側の情報を共有することが大切です。例えば台車を使用する場合、その荷重をお互いに数値で把握します。台車のタイヤのタイプや材質、また車輪の直径、幅によっても接地面積が異なるので、床に対する負荷も異なってきます。台車に限らず、工場内で移動させる設備の情報は、塗り床材の選定において重要となります。

月刊食品工場長2018年9月号より転載

ABC商会の塗り床(食品工場)

タフクリートMH タフクリートMH
耐熱水衝撃性にすぐれる水性硬質ウレタン系塗り床材。
抗菌性があり、食品工場に最適。
タフクリートHF タフクリートHF
耐熱水衝撃性・色安定性にすぐれる平滑塗り床材。
抗菌性があり、食品工場に最適。
ケミクリートHR ケミクリートHR
温冷繰返し、熱衝撃によるふくれ、はがれ、割れなどを解消。
抗菌仕様にも対応。
ケミクリートE ケミクリートE
高強度・高耐久なエポキシ樹脂系塗り床のスタンダード。
豊富な工法とカラー。
ケミクリートMS ケミクリートMS
施工後1時間で歩行可能な超速硬塗り床材。
-30℃の低温下でも硬化。
ケミクリートMS・L ケミクリートMS・L
施工後1時間で歩行可能な超速硬低臭塗り床材。
-20℃の低温下でも硬化。