工場・倉庫などではコンクリート床仕上げの定番

高度経済成長で普及した斬新な工法

「コンクリート一体型」はもともと、米国で多く使われていて、1950年代に当社が国産化し、日本に導入されました。そして高度経済成長を背景に工場や倉庫などへの設備投資が増えていくと、「コンクリート一体型」はそれらの施設で定番の床仕上げになっていきます。
それはやはり、「コンクリート一体型」の強さゆえです。強さとは、コンクリートの下地と一枚岩である強さ、そして耐摩耗性や耐衝撃性の高さを指します。

床仕上げの層が構造躯体を守る

車両が頻繁に往来する、重量物が落下する、......。工場や倉庫では、強い摩擦や衝撃を頻度高く床面に受けることになります。コンクリートがそうした負荷を受けると、ひび割れが生じるなど劣化につながりかねません。
ところが、コンクリート表層が強さを備えていれば、粉塵が発生しにくく、衝撃で床が壊れにくいため、耐久性を確保できます。構造躯体を長期にわたって守り続けられるわけです。

耐久性の高さはコンクリート一体型の歴史が証明

仕上げ後20~30年でも健全な機能

実際に「コンクリート一体型」で仕上げてから時間の経過した建築物の例をみてみましょう。下の写真2点は、工場の例です。「コンクリート一体型」で仕上げた時点の床とそれから14年経過した床を比べています。
経過年数14年の床は長年の摩擦によるツヤが生じています。床表面には台車のキャスター跡や汚れがみられるものの、その機能は健全さを保っています。

施工時

施工時

14年経過時

14年経過時

床表面の様子は、経過年数が20~30年に及んでもそう変わりません。床仕上げから26年経過した建築資材倉庫の例では、一度も補修していないにもかかわらず、表面にはパレットを引きずった傷が少々みられる程度です。

26年経過時

26年経過時

耐摩耗性はコンクリートの4~6倍

この強さを生み出している要因の1つが、耐摩耗性の高さです。それは、JIS規格に基づく試験機を使用した摩耗試験でも裏付けられています。
この試験はもともと、摩耗輪によるプラスチックのすり減り難さを調べるためのものです。JIS規格として定められた試験方法で摩耗輪を2000回転させた場合、コンクリートは0.6mm削れたのに対し、「コンクリート一体型」は使用骨材によっても結果は異なりますが、0.14mmしか削れませんでした。
つまり、「コンクリート一体型」はコンクリート素地に比べ、耐摩耗性が4倍高いといえます。

JIS K 7204に基づく摩耗試験結果 2000回転終了時

JIS K 7204に基づく摩耗試験結果 2000回転終了時
JIS K 7204に基づく摩耗試験結果 2000回転終了時

耐摩耗試験(JIS K 7204)

※コンクリート一体型は、ABC商会「カラクリート」試験時データ

長寿命化で廃棄物の発生抑制にも

コンクリート床の耐久性を確保できると、構造躯体を、20年、30年と、長持ちさせることができます。建築物の物理的な寿命を延ばすことができるわけです。
長寿命化を図れれば、床の劣化を原因とする建て替えには至りません。建築物の取り壊しに伴う建設廃棄物を発生させずに済むわけです。
そのため、「コンクリート一体型」は環境負荷を抑える工法と言えます。企業活動でも環境負荷の大小を意識せざるを得ない時代。「コンクリート一体型」を採用する社会的な意義が、ここにあります。

コンクリート一体型はなぜ、耐久性が高いのか?

コンクリートの表層には脆弱層が

ではなぜ、「コンクリート一体型」はその独特の強さを発揮することができるのでしょうか。その秘密を解き明かしていきます。
コンクリートの材料は、モルタルと粗骨材の砂利です。モルタルは、セメントと水を混ぜたセメントペーストと細骨材の砂で構成されているので、コンクリートの内部は、セメント、砂、砂利で構成されることになります。
問題は、その分布です。砂や砂利は決して均等に分布しているわけではありません。重さの違いから、砂利は内部に、砂は表層近くに分布します。そして表層にはセメントペーストと泥や粘土が混じり合った層が形成されます。
この表層部分はその下の砂や砂利で構成された層に比べると、コンクリートとしての強度を期待できません。そのため、脆弱層と呼ばれます。

コンクリートの断面 床仕上げ前

骨材がモルタル層まで打ち込まれる

脆弱層はコンクリートとしての強度を期待できないうえ、表面は摩耗に弱く、発塵しやすいという特性を持っています。耐摩耗性にも耐衝撃性にも欠けるわけです。
「コンクリート一体型」ではそれを、散布型の仕上げ材料で補強します。
Part1でご説明した通り、この工法ではコンクリート打設後に仕上げ材料を散布し、コテ押さえ作業でそれをコンクリートにすり込んでいきます。すると、仕上げ材料に含まれる骨材が、脆弱層を突き破り、強度を持つモルタル層にくさびのように打ち込まれます。
これによって、コンクリートの表層はモルタル層と一体化し、一定の強度を発揮できるようになるのです。これが、「一枚岩の強さ」の正体です。

コンクリートの断面 床仕上げ後

その強さを生かすには、下地の品質や養生が重要

水セメント比を抑えて表面強度を

ただし「コンクリート一体型」を、その強さを期待通りに発揮できるように、しかもできるだけきれいに仕上げるには、コンクリートの品質にも留意する必要があります。
ポイントの1つは、水です。
水セメント比は日本建築学会の標準仕様書(JASS5)に準拠する範囲内でできるだけ抑える必要があります。それは、コンクリートの水セメント比が大きいほど、その表層に水分が浮く「ブリージング(浮き水)」が生じやすいためです。
多量の「ブリージング」が生じると、コンクリートの表層には脆弱層が厚めに形成されます。そうなると、「コンクリート一体型」で仕上げたとしても、表面強度を確保できなかったり、色ムラが生じたりする恐れがあります。

セメント量285㎏/m3・水セメント比60%

多量の浮き水

セメント量320㎏/m3・水セメント比53%

浮き水はほとんどない

最低1週間程度は保湿養生が必要

「コンクリート一体型」の仕上げ段階でも気を付けるべき点はあります。それは、仕上げ押さえ後の養生です。
Part1ではその最終工程を、「夏は24時間程度、冬は48時間程度、気乾養生したうえで、さらに1~2週間以上、保湿養生するのが推奨」とご紹介しました。
ここで気を付けたいのは、保湿養生です。これは、コンクリート表面の乾燥を防ぎ、仕上げ材料に含まれるセメントを健全に固めるために欠かせない工程です。

保湿養生のイメージ

保湿養生のイメージ

保湿養生が不十分な場合には、「コンクリート一体型」で期待される耐摩耗性や耐衝撃性といった物性を確保できません。ひび割れが生じやすくなるという問題も起きます。最低でも1週間程度は、コンクリート表面に散水し、養生シートで覆うことが必要です。

下地のコンクリートをしっかり打設し、そこを決められた工程に従って仕上げていけば、強度はきちんと確保できます。コンクリートをいつまでも守り続けられるようになり、コンクリート床の耐久性が高まります。「コンクリート一体型」はコンクリート床をいつまでも長持ちさせるために欠かせない工法なのです。

Part1でご紹介したように、「コンクリート一体型」は意匠性や耐久性の面で幅広い対応力を備えています。1950年代以降、各種のマーケットで多様なニーズに応え続けてきた結果です。そうした「進化」は、これからも続いていくことでしょう。

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ABC商会の「コンクリート一体型」床仕上げ

デザインクリート/ペーストデザインクリート
コンクリート表面にパターンマットを押し当て立体感のある自然石や木目模様を多彩に表現する床仕上材。
ペーパーステンシル
コンクリート打設と同時に型紙で仕上げるスピード施工。
凹凸の少ないバリアフリー床に。
カラクリート
コンクリートと一体化する耐久床のスタンダード。鉱物骨材を配合し多彩なカラーを展開。
フェロコン
合金骨材配合ですぐれた耐摩耗性と耐衝撃性を発揮。
工場・倉庫などに最適。
べスコンカラー
鉱物骨材配合で耐海水・耐塩化物性をもち臨海地域に最適。
AGV走行にも対応。
カラーハードEM
大粒の硬質鉱物骨材配合と厚撒き仕上げで驚異的な耐摩耗性と耐久性を実現。
フェロコンハードS(スタンダード)散布工法
コンクリートと一体化する高耐久床。特殊合金骨材配合で抜群の耐摩耗性と耐衝撃性を発揮。
フェロコンハードC(非磁性タイプ)散布工法
セラミック骨材配合でAGV走行に対応。塩水のかかる卸売市場・漁港に最適。
モノリシック・コンプリートフロアシステム
コンクリートと一体化するモノリシック床を緻密で平滑にし、汚れにくくする専用システム。