若手デザイナーが「テラゾー」を“再発見”

モルタル調のほかに、最近、好まれている左官仕上げはありますか。

原田 まだそれほど多いわけではありませんが、じわじわと広がっている印象を受けているのが「テラゾー仕上げ」です。
塗り材である左官は、自由な形をつくれるのが大きな特徴ですが、まさにそうした使われ方が見られるようになってきたのがテラゾー仕上げです。

テラゾーは、近代から高度経済成長期にかけて非常に多く使われましたが、その後いったん廃れた印象があります。そのテラゾーが“復権”してきた感じですか。

原田 昔を知る私たちの世代からすると、テラゾーといえば洗面台などの水まわりとか、オフィスビル共用部の床といったイメージが強いですよね。ところが、最近の若いデザイナーや設計者、そして施工する職人も、そもそもテラゾーを知らずに育った世代なので、そうしたイメージを持っていません。固定観念のない、まっさらな目でテラゾーをとらえて、自由な発想でデザインしているのが面白いところです。

ABC商会 テラゾー仕上げ(コンブリオ 特注仕様)
ABC商会 テラゾー仕上げ(コンブリオ 特注仕様)

形状や骨材の自由度が高く、表現の可能性は無限

若いデザイナーや設計者は、テラゾー仕上げのどこに惹かれるのでしょうか。

原田 形状の自由度が高いことを含め、オリジナリティを出せることも好まれる理由の1つだと思います。配合する骨材にしても、石や貝殻、金属など自分の好みのものを入れることができるので、無限と言えるほど表現の可能性があります。

テラゾーとは少し違いますが、骨材によって独特の表情を出せる材料として、エービーシー商会さんの床材「フェロコンハード」のなかに金属粉を配合した商品がありますよね。20年ほど前になりますが、ある名古屋の大型商業施設で、金属骨材を配合するフェロコンハードの小口の表情を見た設計者が「これは面白い」と言って、かなりの面積で施工したことがあります。
骨材にはそうした面白さがあって、テラゾー仕上げも好みに応じた骨材を混ぜることでオリジナルの表情を描き出すことができるのです。

ABC商会 テラゾー仕上げ(ヴェレージアTR)
ABC商会 テラゾー仕上げ(ヴェレージアTR)
ABC商会 フェロコンハード 断面
ABC商会 フェロコンハード 断面

材料と機械の進化で使いやすくなったテラゾー仕上げ

家具などにも使えるということは、昔と違って、今のテラゾー仕上げは薄塗りができるのですか。

写真:原田左官工業所様ご提供
写真:原田左官工業所様ご提供
研磨機
研磨機

原田 他の左官仕上げと同様、材料に樹脂を入れることで、薄塗りでもひび割れが生じにくくなっています。さきほどお話しした店舗のオリジナル家具も、厚さ10mm程度のテラゾー仕上げです。

また、最近、商業施設のテナントなどでテラゾー仕上げが使われるようになってきた背景には、施工機械の進化があります。具体的には「研磨機」と「集塵機」です。
テラゾーは研磨をして仕上げていくのですが、その際に多くのホコリが立ちます。かつてのテラゾーが衰退した原因の1つには、現場で大量に巻き上がるホコリが敬遠されたこともあったのです。

しかし、その後、研磨機と集塵機の技術が発達し、研磨で出るホコリをそのまま回収できるようになりました。乾式工法の場合に立つホコリも、湿式工法で出る泥水も効率よく回収できます。
現場を汚さず、スタッフの作業安全性も確保できる機械が出たことで、商業施設のテナントなどでもテラゾー仕上げを採用しやすくなっているのです。

実は、当社のこのショールームにあるテーブルも、先日この場所でテラゾー仕上げに改装したものです。
昔だったら、どんなに養生を施しても、ここで研ぐのは困難で、ホコリが立っても問題がない別の場所に持っていって施工するしかありませんでした。
しかし、研磨機と集塵機が進化した今は、ここで研いでも全く問題ありません。