都心の大型プロジェクトで増える左官
ー 最近、原田さんが左官仕上げを手掛けてきたプロジェクトには何か傾向がありますか。
原田 プロジェクトのタイプで言えば、ここ数年は都心部で次々に完成した大型商業施設に入るテナントが多かったですね。ホテルのラウンジや客室もけっこうありました。
それと、オフィスの内装に左官仕上げを取り入れる企業も増えてきた印象を受けています。
オフィスでは、以前から受付の背後の壁1枚のように、ごく一部を左官で仕上げるケースはありました。それが最近は、より広くエントランスまわりを左官で仕上げたり、社員が利用するオフィス内のカフェスペースのような空間に左官を塗ったりするケースも増えてきました。

ー 都心の様々な建築空間で左官が好まれている理由はどこにあるのでしょうか。
原田 自然素材の持つ柔らかで親しみやすい質感を好む風潮が広がっているからではないでしょうか。左官に限らず、例えば木材を使った内装も増えていますから、全体に自然素材を取り入れる雰囲気が高まっているように感じています。とはいえ、当然、都心の商業施設やオフィスなどで、すべてを左官仕上げとするのは現実的でありません。人の目に留まりやすく、その空間を象徴する箇所などで左官を効果的に使うようになってきたと思います。
今も昔も定番はグレー系のモルタル調仕上げ
ー ひと口に左官と言っても様々な仕上げがありますが、最近、好んで使われているものはありますか。
原田 昔から根強い人気があるのは、セメント系のグレー色です。それは今でも変わりません。アパレルでもカフェでも、グレーのモルタル調の仕上げは定番と言えます。下地は、木材で組んだ床だったり、石こうボードの壁だったりしますが、仕上げはモルタル調にしたいという要望は多いですね。
例えば、当社でもよく使っているエービーシー商会さんの無機系塗り床材「カラクリート」は、カラーバリエーションが豊富ですが、やはりよく選ばれるのはグレー系の色です。
ー モルタル調が好まれるのも、やはり自然な質感を持っているからですか。
原田 そうだと思います。そのため、均質すぎる仕上げではなく、打設したコンクリートのように自然なムラが生じるように仕上げることが好まれます。

材料の進歩で「薄塗り」でもひび割れない
ー 商業施設やオフィスなどの内装を左官で仕上げる場合、限られた厚さで塗らなければいけないケースが多いと思います。施工後にひび割れなどが生じる心配はありませんか。

原田 最近は材料がとてもよくなっていて、そうした心配をあまりしなくてよくなりました。
もちろん今でも、従来のようにモルタルだけで薄塗りをすれば、ひび割れが生じる可能性は大いにあります。基本的に、モルタルは下地などの動きには追従できませんから。
しかし、最近は材料に樹脂を混ぜて弾性を持たせることで、下地に対する追従性を高めた塗り材が登場しています。「割れる」というモルタルの弱点を克服しながら、薄塗りでモルタルの質感を出せる塗り材もあります。下地が合板でも石こうボードでも対応でき、なかには厚さ2mmでモルタル調の仕上げができる材料もあります。
ここ数年、店舗やホテル、オフィスなどの内装で、左官が取り入れられるようになってきた背景には、そうした材料の進歩による品質の向上があるのです。
薄塗りの左官が可能になったことで、床や壁以外も左官で仕上げるケースも増えています。
例えば、モルタル調の壁仕上げとデザインが調和するように、木材を基材とするテーブルなどの家具も、薄塗りのモルタル調で仕上げることもあります。
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