高性能住宅の“潮目”が変わった
ー 国内の住宅性能の「現在地」についてお聞きしたい。
住宅業界の高性能化の流れは、2023年から2024年にかけて完全に“潮目”が変わったと感じています。年間の新築受注が数千棟を超える全国規模のパワービルダーが、断熱基準「HEAT20・G2」、気密性能「C値0.5cm2/m2以下」、許容応力度計算ではないものの耐震性能「耐震等級3」の“3点セット”を標準化し、不況下にもかかわらず急速に実績を伸ばしています。
日本の企業は先陣を切るのは苦手ですが、他の企業がうまくいっているのを見た後に追随する“右へ倣え”は得意です。この3点セットがドミノ倒しのように一気に業界に広がっていくと見ています。もちろん、それにより国内の住宅の性能が底上げされるのなら、それは歓迎すべきことです。地域の工務店としても、数年前までトップ・オブ・トップのつくり手の水準だった性能が、もはや“スペシャル”ではなく“メジャー”となりつつある市場の状況を十分に意識しながら家づくりに取り組むことが必要だと考えています。
本当に暖かくて涼しいか
ー 今後の住宅市場の動向は。
しばらくは、ある意味で営業的に非常にキャッチ―な3点セットのみという住宅会社・ビルダーが増殖する状態が続くと予想しています。それにより次は、「果たして本当に省エネで家全体が暖かくて涼しいのか」ということが、より一般的なポイントとして問われてくるはずです。それを実現するためには、日射の取得・遮蔽も織り込んだきちんとした暖房・冷房の計画が必要なのは当然のことですが、何よりも高い精度の現場施工が求められます。
全体のレベルが向上すると、競争や差別化のポイントのレベルも上がります。設計性能である3点セットが一般化することで、必然的にその先の“体感”やそれを担保する施工品質などに、競争・差別化のポイントが移行していくのではないかと考えています。
「チェックリスト」運用が現場の“モチベ”アップに
ー 地域の工務店は、どのように対応すべきか。
こうした状況に関係なく、ずっと以前から、工務店に対して設計や現場管理・施工など家づくりのあらゆる工程でのミスを防ぐための「チェックリスト」の導入を訴えてきました。直接、技術支援を行っている工務店には、当社が運用している500項目に及ぶチェックリストをそのまま提供しています。
本来、何千万円という価格の商品(住宅)の生産者として、厳格なチェック体制を仕組みとして構築・運用するのは当り前にやらなければならないことのはずです。同時に、性能の“同質化”が進む市場で、こうしたチェックリストに基づくチェック体制があるかないか、つまりは「ちゃんと設計・施工してくれるのか」といった点が、消費者(顧客)がつくり手を選ぶ際に見極めるポイントになっていく可能性は高いと思われます。
チェックリストを適正に運用することにより、ミスを防ぐだけでなく、監督や大工・職人など「より良いものをつくろう。より高い品質を目指そう」という現場のモチベーションが高まります。
例えば、現場で気密測定を行う際には、必ず最大風量で回してみて、すき間を見つけたら、すぐに気密テープの増し貼りや簡易型の現場発泡ウレタンによってリカバリーし、すき間をつぶします。やり損ねた部分に発泡ウレタンは最適で、丁寧にすき間を埋めることは性能向上につながる作業になります。気密測定を、単なる現場のルーティン作業ではなく、“貴重な性能向上のチャンス”や“施工品質の担保装置”に位置づけています。


拡大するリフォーム・リノベーション市場
ー 今後、地域工務店に必要とされるスキルとは?
既存住宅活用が進み、リフォーム・リノベーション市場が拡大していくと、顧客によって異なる要求に合わせ、性能を臨機応変に変えていけるスキルが求められます。断熱・気密や耐震の性能を確保するのも格段に難易度は上がります。対応できる監督や大工・職人の確保・育成という深刻な問題はあるのですが、新築以上に“現場力”の優位性が発揮される分野とは言えるでしょう。
リフォームで絶対にやるべきこととして①窓の高断熱化②床の断熱補強③給湯器の交換④ユニットバス化⑤天井もしくは屋根の断熱補強―の5項目を提唱しています。床下の断熱補強は、床下から現場発泡ウレタンを吹き付けられる場合は、断熱と気密を一度に完了させることができ、その効果は絶大です。天井・屋根の断熱補強に関しても、床下と同じで断熱・気密化を一気にできる現場発泡ウレタンを推奨しています。工務店には、こうしたポイントを押さえながら現場にあわせて臨機応変に対応できる施工技術を磨いていってほしいと思います。
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