市場の設計は「街」をつくる面白さ

今日は「東京都中央卸売市場 豊洲市場」を題材に、卸売市場の「床」に焦点を当ててうかがっていきたいと思います。
西村さんはこれまでに多くの市場を設計されていますが、建築としてはどのような特徴がありますか。

西村 市場というのはけっこう面白い建築です。誰もが物流機能をイメージするでしょうけれど、それだけではありません。事務所や飲食店、物販店、銀行、診療所、冷蔵庫、駐車場などの様々な機能が詰まっていて、さながら小さな街のような建築です。市場の設計には、ひとつの街をつくるような楽しさがあります。

どのプロジェクトで、そうした「市場建築」の面白さに気付いたのですか。

西村 実は、日建設計に入社してから10数年間、私はオフィスや学校などを設計していました。初めて担当した市場は、1989年から翌年にかけて新設開場した「東京都中央卸売市場 大田市場」(東京都大田区)でした。大田市場につくる延べ面積4万m2ほどの事務所棟を設計するということで設計チームに加わったのですが、フタを開けてみると市場本体の設計も手掛けることになったのです。以来、各地の市場を始め、物流センターや生産施設などの大型施設の設計を手掛けることが多くなりました。今年で日建設計に入社して51年目ですが、これまでに設計した建物の延べ面積は約230万m2になります。

提供:東京都中央卸売市場

卸売市場の設計は一筋縄ではいかない

そうしたノウハウをもとに豊洲市場の設計を担当されることになったわけですね。

水産仲卸売場棟 1階仲卸売場
水産仲卸売場棟 1階仲卸売場

西村 当社は、東京都が実施したプロポーザルで設計者に選ばれました。その際、当社が提案の目玉として、「市場を利用する業界との早期の合意形成」を掲げました。というのは、豊洲市場の建物を建設・管理するのは東京都ですが、設計の内容は、市場を利用する市場業界の"オーダーメイド"になるからです。

市場の利用者である業界の要望を汲んで設計していくのですか。

青果棟 1階卸売場
青果棟 1階卸売場

西村 そうです。そのため、当社が設計者に選定された後、最初に実施したのは、豊洲市場を利用することになる各業界団体へのヒアリングでした。2カ月ほどの間、毎週、各団体と個別に設計分科会を開き、それぞれの意向や要望を聞き取り、設計に反映させるための作業を進めました。
多様な声を集約する市場の設計には、一筋縄ではいかない難しさがあります。豊洲市場を担当した当社の設計チームのなかで、市場を設計した経験があるのは私くらいだったので、そうした初期の作業から全面的にかかわることになりました。あの2カ月間は大変でしたけれど楽しかったですよ。

「床の性能」は機能維持の生命線

ここから本題に入りますが、様々な意見の反映も含めて、豊洲市場の「床」にはどのような機能や性能を満たす必要があったのですか。

水産仲卸売場棟 4階積込場・買出人通路
水産仲卸売場棟 4階積込場・買出人通路

西村 市場では「モノを横に動かす機能」の確保が重要です。フォークリフトや、「ターレ」と呼ばれる電動のターレットトラック(小型搬送車)、手押し車などを使って、大量の荷物を横方向に移動させるからです。
そうした市場の機能を保つためには、床の性能が長期にわたって安定的に確保されている必要があります。市場の命は「床の性能」にかかっているとも言えるのです。

市場の床の性能を長期間にわたり維持するためには、どのような視点で材料を選ぶ必要がありますか。

西村 極めて安定した材料を使いたいというのが、設計者として譲ることのできない要求です。つまり、摩耗しない、クラックが広がらない、平滑性を保てるといった性能を満たす硬い材料です。
床材には非常に多くの材料があり、いろいろな新しい材料も出てきますが、私の経験上、市場の床に最も適しているのは「無機系塗り床材」です。

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