汚れに強く、長く清潔さを保てるコーリアン®

コーリアン®はメンテナンス性とデザイン性を兼ね備えた素材とのことですが、具体的にはどのような点を評価されていますか。

小林 まず、メンテナンス性という視点から高く評価できるのは、とてもタフな素材であることです。ほかの素材と比べると、とても汚れに強いのです。
手洗いやパウダースペースの汚れは、水汚れだけではありません。例えば、女性がふと落としてしまった口紅が付着するなど、いろいろな汚れがあり得ます。
コーリアン®は、そうした汚れが付いても簡単に拭き取れるので、とてもメンテナンスのしやすい素材です。仮に拭き取れないほどしつこい汚れが染み付いたとしても、表面を磨けばもとのきれいな地肌に戻るので、長くきれいな状態を保つことができます。
柔らかみがあるのに固くて丈夫というのが、コーリアン®の大きなメリットだと思います。

海ほたるPA 5階女子トイレパウダーコーナー
海ほたるPA 5階女子トイレパウダーコーナー

一体成型に見える「シームレス接着」はコーリアン®だけ

デザイン性という点では、具体的にどのようなところを評価されていますか。

海ほたるPA 1階女子トイレ
海ほたるPA 1階女子トイレ
海ほたるPA 1階女子トイレ
海ほたるPA 1階女子トイレ

小林 コーリアン®ならではの特長は「加工性」の高さです。
コーリアン®は、板材から切り出した部材を接着して組み立てていくので、長さや形状は自由自在です。たいていのデザインは実現できます。
特に高く評価できるのが、「シームレス接着」という技術です。板材の小口や、部材同士の継ぎ目が目立たない接着技術なので、段差や出隅があるデザインでも一体成型品のようにきれいなディテールで仕上がります。
別の素材を使って同じデザインをしようとしても、出隅に部材の小口が現れてしまって、コーリアン®のようなきれいな納まりにはなりません。一体的に見せるために継ぎ目に塗装を施しても、やがてはがれてしまいます。
一体成型品に見える加工性の高さで、コーリアン®にまさるものはないと言えるでしょう。

空間を彩る色の組み合わせも自在

小林さんが設計されたトイレには、複数の色を組み合わせて、空間に彩りや豊かさを添えるようなデザインも見られます。

小林 異なる色の板材を組み合わせて、多様なデザインをつくり出すことができるのもコーリアン®ならではの特徴ですよね。
海ほたるPAでも、男性用トイレの小便器の背面板をストライプ柄にしてみたり、子ども用トイレの手洗いや仕切り板を明るいイメージのデザインにしたりしています。

海ほたるPA 5階男子トイレ
海ほたるPA 5階男子トイレ

全体としては白を基調としてデザインが多いようですが、どのような意図によるものですか。

小林 やはりトイレは清潔感が大切なので、白色系を中心に使うことが多いですね。でも、ひと口に白と言っても、コーリアン®は複数の白系統の色が用意されているので、微妙な違いを見極めながら選んでいます。
箱に入ったサンプルを眺めながらアイデアを練るのはけっこう楽しいですよ。実際にサンプルを並べながら検討していくと、「赤系統の色にもっとバリエーションがあればいいのに」と思うようなこともよくあります。

海ほたるPA 5階幼児用コーナー
海ほたるPA 5階幼児用コーナー

商業施設から文化施設、鉄道駅や空港、パーキングエリア、公園まで、日本の公共空間にあるトイレはとてもよくなってきています。発注者も積極的にトイレをよくしていこうとしています。小林さんとしては今後のトイレ空間にどのような期待をしていますか。

小林 私が、香川県宇多津町で初めて公衆トイレの設計に関わったのは30年ほど前のことです。当時、トイレは社会の片隅に置き去りにされていましたが、今ではみなさんの意識も変わり、本当に必要なコストもかけてもらえるようになっています。
ただ、商業施設や公共交通機関のトイレがよくなったことに比べると、学校や病院などのトイレは改善の余地があると感じています。その意味でも、私もまだまだ頑張らなければいけないと思っています。

取材日:2020.2.4

小林純子(こばやし じゅんこ)

■プロフィール

小林純子(こばやし じゅんこ)

1967年日本女子大学家政学部住居学科卒業。株式会社田中・西野設計事務所、株式会社アトリエブンク、株式会社針生承一建築研究所を経て、1989年一級建築士事務所ゴンドラ設立。1996年に有限会社設計事務所ゴンドラに改組。
1988年に公衆トイレ「チャームステーション」(香川県宇多津町)の設計に関わったのを機に、日本のトイレ文化の改革に取り組む。1996年より一般社団法人日本トイレ協会副会長。著書に「トイレが変わる」(共著、保育社)、「木造住宅の設計監理」(共著、井上書院)、「変わる学校のトイレ」(草土文化)、「心に響く空間~深呼吸するトイレ~」(弘文堂)などがある。