
代表取締役 小林純子様
最近30年ほどのあいだに日本の公共空間にあるトイレは大きく進化した。
利用者の視点に立った使い勝手やデザイン、プランに様々な工夫が凝らされるようになってきた。そうしたトイレ空間の進化を先導した第一人者と言えるのが、一級建築士事務所有限会社設計事務所ゴンドラ代表取締役小林純子様だ。各種用途の建物や公共空間で、オリジナリティ溢れるトイレ空間を提案し続ける小林様が、トイレ設計の"必需品"として挙げる素材が、人工大理石の「コーリアン®」。2019年4月に大規模リニューアルを終えた東京湾アクアラインの「海ほたるパーキングエリア(PA)」の事例を題材に、トイレ設計の基本的な考え方をはじめ、コーリアン®を使う理由やコツを語ってもらった。
※以下、敬称は省略させていただきます。
もくじ
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東京湾に浮かぶ「海ほたるPA」のトイレを全面改修
ー 2019年4月に大規模リニューアルされた東京湾アクアラインの「海ほたるパーキングエリア(PA)」で、トイレの改修設計を手掛けられました。どのようなコンセプトで設計されたのですか。
小林 今回、リニューアルしたのは、施設の1階と2階、3階、5階にあるトイレです。実は、同じ海ほたるPAで、私は2010年に4階トイレの改修設計を手掛けました。そのトイレ空間が好評だったことから、東京五輪・パラリンピックに向けて実施されたのが今回のリニューアルです。
2010年に改修した4階トイレでは、海に面して隣り合う男女トイレを、プランニングから見直しました。双方に海に面した横窓があったのですが、間仕切り壁の位置を変更して、男性トイレのほうが大きな横窓があるようにしたのです。トイレに入った瞬間、正面に東京湾が広がる演出です。
一方、女性トイレは、ブースが直線状に並ぶ従来型プランを根本から見直し、新しいプランを提案しました。女性の場合、トイレで並ぶことが多いですよね。そのとき、直線状にブースが並ぶトイレだと、先頭で待つ人はどこに立てばいいのか迷ってしまいます。奥のブースほど様子が見えづらく、空いているのかどうかも分かりません。実際、女性用トイレの利用状況を見ると、入り口に近い手前のブースほど利用頻度が高く、奥まで行かずに諦めてしまう人も少なくないようなのです。
利用者が心をリセットできる空間に
ー そうした従来型の女性用トイレの問題意識に対してどのようなプランを提案したのですか。
小林 ブースを円弧状に配置して、トイレに入ったら全体が見渡すことができ、人が溜まるスペースのあるプランを提案しました。このプランならば、順番待ちで並ぶ位置に戸惑うこともないし、空いているブースもひと目で分かるようになります。全体を見渡すことのできるトイレ空間は安全でもありますよね。
ー 小林さんにとっても、トイレ空間のあり方に手ごたえを感じるプロジェクトだったようですね。
小林 プランから見直した全面改修によって、トイレがおもてなしの場になること、そして心を休める場になることが示されたと実感しました。
これまでに設計してきたトイレにも言えることですが、海ほたるPAで大切にしたテーマは、「利用者が心をリセットできるようなトイレ空間をいかにしてつくるか」でした。そのためには、使いやすさはもちろんのこと、トイレという限られたスペースを、いかに伸びやかな空間にデザインするか、そしてそれを利用者の誰もが享受でき、その環境が長く維持されることが大切だと考えました。
コーリアン®はトイレ空間の"必需品"
ー 2019年に改修したトイレの設計にも、そうした意図が継承されているようですね。
小林 今回も女性用トイレは、ブース全体を見渡せるつくりにして、空間の真ん中にアイランド型の手洗いを設けています。同じような考え方を一部の男性用トイレにも取り入れ、外周に小便器を並べ、真ん中に手洗いを配置したところがあります。
ー 手洗いやパウダースペースは、使い勝手からデザインまで、かなりディテールを追求して設計されているようですね。
小林 ボウルとカウンターが一体型の手洗いを中心に、人工大理石の「コーリアン®」でつくりました。コーリアン®は、複雑な形状をつくることもでき、ディテールもきれいに納まります。
そうしたデザインの自由度の高さに加えて、とてもタフな素材なので、私たちが設計するトイレにとってコーリアン®は"必需品"であり、大切な"パートナー"でもあります。


