JR渋谷駅の地下に広がる渋谷地下街、略称「しぶちか」は1957年に開業。
日本初ともいわれる地下の商店街であるとともに、鉄道各線の乗り換え通路としても利用されている。
改修工事にあたり、古い建築物でもあり、仕上げを撤去したら既存躯体との誤差も多々あり、「いかに違和感なく納めるか、現場では多くの設計・施工者が心を砕きました」と東急設計コンサルタント 建築設計本部の山口昭彦氏と富岡毅氏は語る。
「改修設計にあたって事業主から求められたのは、公共の通路として安全・安心を確保すること、明るく快適な空間にすることでした」(山口氏)。
デザインコンセプトは、「渋谷らしさ」「駅との関係性を意識」「回遊性」「誘引力」という4点が掲げられ、天井や床の設計にも反映された。

人の流れをルーバーで表現
計画では渋谷らしさの象徴とも言える地上のスクランブル交差点に対して、地下にも「アナザースクランブル」を造るという案が商環境デザインとして提示された。そこで採用されたのが、エービーシー商会のアルミ片流れルーバー「インターライン」だ。
人の流れに沿うように張られた「インターライン」は、回遊性・誘引力を演出。
通路の交差部ではルーバーが二重三重に交差するといった、オリジナルな納めとなっている(写真2)。
「アナザースクランブル」というコンセプトの基、生まれ変わった「しぶちか」

ルーバーのデザインに、蓄煙という防災上の機能も
今回、大きな課題となったのは設備関連だ。
実際に設計業務に携わった富岡氏は「古い施設であるため、現行の法規や基準に満たない部分が多々ありました。そこで防災評定を行ない、知事認定を取得することで防災性の向上を図りました」と説明する。
この防災評定では、火災時の避難時間を確保するため、「天井開口率50%以上」という条件が設けられた。この案件では、煙を天井内にとどめる蓄煙の役割もあり、デザインに機能を持たせることとなった(図1)。

特注対応の光幕天井でデザインをサポート
そのほか、「地上にあいた穴から光が差し込む」というイメージを光幕天井「アートシェード」で表現(写真1)。
その不定形なデザインについても同社が特注で対応。通路ごとに計4か所採用されることとなった。
「アートシェード」の形状は特殊なR形状であったため、ルーバー越しに見える奥の天井の見え方、照明の光の届き方などをモックアップで綿密に確認したという。
「施工段階でも設計変更が生じるなど納期の厳しい中、エービーシー商会さんは臨機応変に細かいリクエストにも対応してくれたので助かりました」と感想を述べた。
通路の機能を維持しながら工期短縮を可能に
床については当初、既存テラゾータイルを撤去し、新しいタイルに貼り替える計画だったが、施工会社から提案されたのは、同じくエービーシー商会の合成ゴム成形タイル「ノラメント」と速硬性塗り床材「ケミクリートMS・L」の組み合わせだった。既存のテラゾータイルの上に「ケミクリートMS・L」を施工して床全体を均し、「ノラメント」を貼って仕上げるという工程を小面積ごとに繰り返し夜間行なった。
「鉄道乗り換え通路の機能を維持しつつ、工期も短縮できたのは大きな利点でした」と富岡氏。
「ノラメント」の採用にあたっては、検査機関を通して防滑性の性能を確認するほか、「実際に水をたらしてサンプルの上を歩く実証実験なども行い、駅舎等での改修実績なども考慮して採用を決めました」と山口氏。
既存タイル床を活かして工期を短縮

リニューアルオープン後
安全性を確保しながら、意匠面でも細心の注意を払った「しぶちか」のリニューアル。
「新しさとともにどこか昔懐かしい趣も残っている」と評価されているという。
そこには、設計者の苦心と意欲とアイデアとともに、エービーシー商会の「ご要望をカタチにする姿勢」が込められている。




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