横浜市青葉区総合庁舎は、1995年の竣工以来、保健施設、庁舎区役所などの機能を兼ね備えた複合施設として利用されてきた。
その1階にある区民ホールの天井改修工事が2021年2月に竣工した。
これは、横浜市の「公共建築物天井脱落対策事業」の一環として行われたものだ。

改修前 改修後

天井材質量2kg/m2以下、断熱性・吸音性が避難所として役立つ

この改修工事で前提となったのは、天井脱落対策にかかわる技術基準告示「国土交通省平成25年告示第771号」に定められた、いわゆる「特定天井」についての対策だ。伊藤氏は4~5種類の天井材と工法を比較表にまとめ、発注者である横浜市、青葉区と協議を行った。
最終的に選択されたのが、エービーシー商会の「かるてん®abcスクリュ」だった。

最大の特長は軽量であることだ。素材本体の重さはわずか0.7kg/m2。下地を含めても2㎏/m2以下に収まる。
「サンプル材を手に取ったとき、あまりの軽さに驚きました。これなら震災に見舞われても明らかに安全だなと実感しました」。

青葉区の広報サイトでも、「この工事は吹き抜け部分の天井脱落対策を行っていたもので、災害が発生した時に区民の皆様の安全を確保し、防災機能の役割が十分に果たせる施設になることができました」(令和3年3月 小澤明夫区長)とのメッセージが掲載されている。

万一、地震や衝撃などによって天井から脱落したとしても、石こうボードと違って、軽く薄い素材のため、落下しても粉塵が舞うことはない。振動台試験で実地震波を用いた安全性の検証でも、変形、破損、脱落は起きなかった。4.5mmと薄く軽量でありながら高い断熱性・吸音性も発揮。災害発生時の避難所など利用者の安全を第一に考える場所でも積極的に採用されている天井材だ。

用途に合わせて工法は4種類、将来の張り替えも容易

「かるてん®abc天井システム」には、用途に合わせた4種類の工法が用意されている。アルミ下地にビス留めする「かるてん®abcスクリュ」が採用された(図1)。

「かるてん®abcスクリュ」システム図

図1

この工法であれば、天井改修時に既存パネルの割り付けと器具の配置を調整しながら施工を進めることで、既存の構造から大きく変えることなく置き換えることができ、照明器具、エアコンの吹き出し口、スピーカーなどは交換せずに使用することができた。

検討段階では「ビス留めによる材の継ぎ目が目立つのでは」という懸念もあったが、「まったく気になることはありませんでした」。

他の選択肢としては、膜天井も検討されたが、既存の吊り天井とは異なる特殊な工法を用いるため、メンテナンス時の手間が問題となった。その点、「かるてん®abcスクリュ」であれば、既存の吊り天井と同様、ビスを外すだけで容易に張り替えることが可能だ。そうした将来のメンテナンス性についても、採用にあたって評価の対象となった。

用途に合わせた4工法

かるてん®は帝人フロンティア(株)の登録商標です。

照明器具・スピーカー
照明器具・スピーカー
エアコンの吹き出し口
エアコンの吹き出し口
点検口
点検口

高所での作業もスムーズ、柔軟な素材は自由な設計を可能に

「かるてん®」(図2)は、カッター1本で必要なサイズへ容易に加工できる。ロックウールや石こうボードのような加工時の粉塵の飛散や騒音もほとんど発生しない。軽量であるため、取り回しやすく高所作業もスムーズだ。

区民ホールは曲面が美しい複雑な意匠が特長的である。地域の住民にも長い間親しまれてきた空間ということもあり、その意匠性をなるべく生かす方向で改修プランを検討する必要があった。既存天井の曲線を活かすために、その加工性の高さが大いに貢献したといえる。

「かるてん®abcスクリュ」で用意されている標準色はホワイトとブラックの2種類。
市の担当者と協議して、明るい印象となるホワイトを選択した。「色や柄をプリント加工することもできるんですね。色や柄を使えば華やかな演出も考えられますね」。
今回の改修案件は、伊藤氏のイマジネーションを大いに刺激する経験となったようだ。

「従来の天井材と比べて軽量なので、災害時の安全性を高められるという特長は、多くの発注者に評価されると思います。今後の耐震改修案件では真っ先に採用候補に挙がる天井材になるでしょう」と強調する。

◆ ◆ ◆

近年は地震が頻発し、天井落下などの被害も懸念されている。建物の安全性を高めるためには、その裏付けとなる具体的な提案が必要だ。エービーシー商会では、今後も「かるてん®abc天井システム」のような商品を提供することで、社会の安全環境の構築に寄与していく。

かるてん®の素材

基材

:ポリエステル樹脂系不織布

表面仕上

:両面ガラスクロス
表面ガラスクロス
裏面アルミシート

厚み

:4.5mm

重さ

:0.7kg/m2(本体のみ)

密度

:148kg/m2

国土交通大臣認定 不燃材料認定番号取得

図2

標準色

ホワイト
ホワイト
ブラック
ブラック

合わせてお読みください

コラム
コラム