最近、街なかでよく見かける"新しい"テラゾー仕上げ

自由な意匠で空間を演出

最近、「テラゾー」という仕上げを取り入れて新築・リニューアルした建物をあちこちで目にするようになりました。
商業施設やオフィスビル、ホテルの共用部、店舗の内装、ショールームなど、様々な建物や空間でテラゾー仕上げが使われています。最も多いのは床ですが、壁や什器などにもテラゾーを用いたケースが見られます。

自由な意匠で空間を演出

それらの多くに共通するのは、意匠性を重視した空間をテラゾーで演出している点です。細かな自然石などを散りばめた、テラゾーならではの素材感を生かしつつ個性的な空間を描き出しています。
テラゾーのデザインは、無限と言えるほど多彩です。シンプルに自然石の質感を表現するものもあれば、具体的なモチーフを下地にしたデザインなど、それぞれの空間の意図に沿った意匠を自在に創り出すことができます。

ハリウッドの観光名所もテラゾー

ハリウッドの観光名所もテラゾー

英字でTERRAZZOと表記するように、テラゾーはイタリアの発祥とされています。
建築の仕上げ材としてポピュラーになったのは20世紀前半のことです。第一次世界大戦後に台頭したアールデコやモダニズムの潮流に乗って盛んに使われるようになりました。

世界的に知られるテラゾー仕上げとしてよく名前が挙がるのが、米国ハリウッドの観光名所「Hollywood Walk of Fame」です。大通り沿いの歩道に、エンターテイメント界の著名人の名を刻んだ星型プレートが埋め込まれています。歩道の舗装と、星型プレートは色が違いますが、どちらもテラゾーです。

テラゾー

同じように、日本でも近代以降の大型建物や公共建築などで、好んでテラゾーが使われました。
当時のテラゾーデザインは、現存する近代建築や、古い美術館・博物館、学校の洗面所、地下鉄駅のコンコースなどで今も見ることができます。

一時は衰退するも"素材感"で人気再燃

骨材調達や調合の手間、環境問題が弱みに

当時の日本でテラゾーが普及した背景には、安い人件費や、高価な石材の代替といった側面がありました。しかし、高度経済成長期以降、徐々にテラゾーは存在感を薄くしていきます。大量生産されるタイルなどの工業製品が普及し、輸入石材も購入しやすい価格になったためです。

従来のテラゾーは、手間や時間のかかることが弱点でした。骨材の選定・調達、材料の調合などの作業を、現場ごとにこなしていかなければならず、次第に避けられるようになりました。

こうした複数の要因からテラゾー仕上げは減っていきましたが、それと同時に技能を持つ職人も減り、その後は一部でささやかに受け継がれていく時代に入ります。

自然な素材感で人気再燃

自然な素材感で人気再燃

そんなテラゾーが今、再び注目されています。
テラゾー柄が現代風に洗練され、若手を中心とする建築家やデザイナーらが、テラゾー特有の深みのある自然な素材感を“再発見”し、それぞれが思い描くデザインを実現できる古き良き素材として好んで使うようになっています。

注目される背景には、テラゾー自体の進化があります。
従来の技法が受け継がれる一方で、その弱みを乗り越えて進化した“現代版”のテラゾーが登場してきました。それによって、以前よりも使いやすい状況が整ってきたことが、最近のテラゾー人気を大きく後押ししています。

可能性を広げる"現代版"のテラゾーも登場

「現場テラゾー」と「人造石研ぎ出し仕上げ」

昔からあるテラゾーは、セメントや樹脂を「主材」とし、「骨材」「顔料」を練り込んで、床や壁に塗り付けた後、研ぎ出して仕上げる左官技術です。かつては高価だった大理石に代わる仕上げ材として普及した経緯があるため、「人造大理石」と訳されることもあります。

ひと口にテラゾーと言っても、切り口によっていろいろな分類ができます。そのなかで、よく目にするのは“広義”と“狭義”のテラゾーの分類です。
広義のテラゾーは、“研ぎ出し仕上げ”の総称を意味します。

現テラの例 人研ぎの例

一方、狭義のテラゾーでは、用いる骨材の「粒度」によって2つのタイプに区別します。粒度の大きい骨材を使う場合を「現場テラゾー」、細かな骨材を用いる場合を「人造石研ぎ出し仕上げ」と呼び分けます。通常、「現テラ(げんてら)」や「人研ぎ(じんとぎ)」と略称で呼ばれています。
現場テラゾーも人造石研ぎ出し仕上げも、技法としては基本的に従来のテラゾーを踏襲するものです。

「プレミックス」や「セラミックタイル」が新たな選択肢に

プレミックスのテラゾー

プレミックスのテラゾー

技術の発展に伴って、従来型のテラゾーの弱みをクリアした“現代版”のテラゾーも開発されています。
その1つに挙げられるのが「プレミックス」のテラゾーです。文字通り、あらかじめ材料を調合して製品化したものです。専門的な技能を持たなくても、規定の配合比で材料を混ぜるだけで、従来と同じようなテラゾー仕上げを、安定した品質でつくれるメリットがあります。

テラゾー調セラミックタイル

テラゾー調セラミックタイル

少し意外なところでは、セラミックタイルの分野でもリアルなテラゾーデザインが登場しました。
これまでのテラゾー柄セラミックタイルは、「プリントタイプ」しか存在せず、左官仕上げのようなリアルな質感をタイルで実現するのは困難だとされてきました。
しかし、近年、製法技術が急速に発展し、本格的なテラゾー調のセラミックタイルをつくることが可能になりました。表面だけでなく、セラミックタイル全体、つまり小口にもテラゾーの柄が現れる凝った製品も出ています。
このように、現在では従来型の「現場テラゾー」や「人造石研ぎ出し仕上げ」に加えて、プレミックス製品のテラゾー、そしてテラゾーデザインのセラミックタイルもあり、テラゾーを取り入れたデザインの幅が大きく広がっています。

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    • ●テラゾー本来の自由度は継承
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    • ●上質なテラゾーデザインの可能性を広げる
    • ●高強度に進化した"セメント"のテラゾータイル

ABC商会のテラゾー仕上げ

塗り床(無機系)

ヴェレージアTR
バインダーと骨材の組み合わせで多彩なデザインが可能な無機系速硬研ぎ出し床仕上材。
コンブリオ
自然な風合いを生かした無機系テラゾー床。改修・改装にも最適。

セラミックタイル・セメント擬石

ベニス ヴィッラ
テラゾー調
レグラーノ
テラゾー調
コンプレスド テラゾー
大理石テラゾー